093533 ランダム
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目指せ!シナリオライター

目指せ!シナリオライター

続き

昨日の大雨とは、変わってすっきり晴れていた。
今日から夏休みである。

スーパー田中屋(昼)
パートA「あら、いつものお兄さんじゃない。キャベツ安くしとくわよ。買ってらっしゃいな。」
風見「い、いえ。」
風見、あたりを見回している。
走る。走る。走る。
多くの客が、風見を見ている。
パートB「今日から、しばらく涼風さんなら休みよ。何でも、実家のお母さんが倒れたらしいの。」
風見「そ、そんな。」

優美・自宅
ピンポーン
人の気配がしない。
ラッキーが走ってきて、風見に抱きつく。
久美「優美、お祖母ちゃん、夕べ遅く倒れたらしくて、今朝、早くに出掛けたよ。一週間位したら戻るって言ってたから、それまで我慢だよ。
先生がこれだけ動けると思わなかったよ。」
久美、感心している。
風見「こら、先生をおちょくるな。」

一週間後
風見・自宅(朝)
風見の携帯電話がなる。
風見「もし・・・」
久美「先生、優美、もうしばらく戻れないって。お祖母ちゃんの容態、悪いらしいの。」
風見「そっか。仕方ないな。」
風見、電話を切り、ため息をつく。
空をみると、風見の心と同じように曇っていた。

一月後
優美・自宅
風見、家の前に来ては、去るの繰り返し。
久美「先生、みっともないよ。ストーカーじゃないの。」
風見「(ビクッ)何だ。高原か。脅かすなよ。」
ラッキー、風見に飛びつく。
久美「ラッキーは、本当に先生のこと好きだね。」
風見「まあ、俺が小さいころ面倒みてたからな。」
久美「心配だね。先生。」
風見「ああ。」

夏休み終わりまで一週間
久美・自宅
久美「はい、あっ、先生。まだないよ。連絡。もう少し我慢して、今は、自分のことより優美達のこと考えてあげて。辛いだろうけど。連絡来たら知らせるから。」
優美と写った写真を見る。
ワンワン、ラッキーがよってくる。
久美「どうしたんだろうね?優美は。」
ワンワン、気持ちがわかるかのようにか細い声で鳴いた。

夏休み最終日
公園(昼)
優美の電話の声「もしもし、久美。あたし、転校するかもしれない。お祖母ちゃん、まだよくならないし。寝たきりのお祖父ちゃん、ほっとけないし。ごめんね。連絡遅くなって。うん。うん。ありがとう。あっ、風見先生にごめんねって。お母さんに私から気持ちは、伝えたよ。こんなことになっちゃたから。気持ちは、うれしいって。一緒にいると楽しかったし、年のわりに頼りがいもあるけど、どこか抜けていて憎めない人だって。まるで、結婚する前のお父さんみたいだって。」
久美は、電話を切った。
留守電を聞き、涙を流す風見。
久美「先生。まだ、転校するって決まったわけじゃないんだから。元気だそうよ。祈ろう。お祖母ちゃん元気になれって。」
風見「わかってるよ。今、二人にとって大事なときだろうから。」

通学路(朝)
健一「何、転校しちまうかもしれない?」
久美「まだ、決まったわけじゃないけどね。」
健一、黙り込んでしまった。
久美「健一、男なら優美が戻ってきたときもう一度気持ち伝えてごらんよ。」
健一、自転車に乗って走り出した。

数週間後
風見・自宅(夜)
風見「もしもし、お袋か。何?」
千春「落ち着いて聞くんだよ。菊枝さん、昨日亡くなったよ。お前に心配かけまいとして、口止めされてたんだ。許しておくれ、優。」
風見、電話口で、泣いて謝る母に何も言えなかった。
風見、菊枝との思い出がよみがえる。
菊枝の家の柿の実をとって怒られたり。
お菓子をもらったり。
いじめられている所を助けられたり。
風見、声をあげて泣き出した。
風見、外へ出て、自転車で河原へ向かった。
その時、部屋の携帯電話が鳴っていた。
優美からだった。
翌日から、風見は、学校を休み福岡へ帰った。

学校・教室一年C組(3時限目英語)
ヒゲオヤジ(中村)「今日から、風見先生は、不幸があったため私が代わりに英語を担当します。」
女子生徒A「いやだー。ヒゲオヤジ。」
生徒達、ざわつく。
ヒゲオヤジ(中村)「誰だ?ヒゲオヤジって言ったのは。」
久美「・・・(大丈夫かな?)。」

福岡・美紀の実家(夕方)
美紀と優美、一人一人の弔問客に頭を下げる。
美紀「どうもありがとうございます。」
風見「涼風さん?涼風さんのご実家だったんですか?」
美紀「先生?どうして?」
優美「あっ、先生」
二人は、驚いた表情で風見を見つめる。

風見「実は、ここは、自分が中学校から高校まで住んでいたんですよ。菊枝さんには、転校してきていじめられていた自分を助けてくれたり、時には、友達になってくれて一緒に遊んでもらいました。涼風さんのご実家とは驚きました。」
優美「本当に私たちも驚いた。」
千春「優、先に来てたのかい?おやまあ、あんたのお祖母ちゃんだったとはね。」

風見の実家
千春「さあ、何もないけど、召し上がってくださいな。」
優美「わあ、スクランブルエッグ、私、大好物なんです。」
千春、それを聞き喜んでいる。
千春「優も好きでね。特に菊枝さんのは、おいしくてね。よく習いに行ったもんだよ。でも、なかなかあの味は、出せないよ。」
美紀「うちもみんな好きだったんですよ。亡くなった主人が優美に作ってやろうと、うちの母に習っていたんですよ。一生懸命練習してましたね。とうとう、母は、超えられなかったみたいですけど。」
優美「先生のスクランブルエッグやお父さんのもみんなお祖母ちゃんの味だったんだ。」
千春「そうだよ。優も菊枝さんに習って私に作ってくれたもんね。」
風見は、照れて頭をかいた。

河原
風見「東京には、戻らないんですか?」
美紀「多分、帰らないと思います。来月、一回引っ越しの準備で戻るだけだと思います。」
風見、うつむき黙ってしまう。
美紀「先生の気持ちは、うれしいですけど、今は、こういう状態で何も考えれなくて・・・。」
風見「いいえ、そんなことは別に・・・。」
美紀「昔は、この河原で、ザリガニとかフナとかとって遊んでたんですよ。結構なお転婆っ子で男の子と混じって泥だらけになってました。」
風見「意外ですね。」
美紀「でも、中学入ると、急に男の子と話すのが恥ずかしくなったり、人見知りが激しくなったんです。」
優美が走ってきた。
優美「お母さん、先生、夕飯できたよ。今日は、私が作ったんだよ。」
美紀「おかずは何でしょ?楽しみだわ。」
風見「そうですね。早く戻りましょう。」
優美「早く、早くさめちゃうよ。」
笑顔で顔を見合わせる二人。
早足で優美の方へ走っていく。
二人は、いつの間にか手をつないでいる。

風見・実家
風見「おっ、シチューか。前にも作ってもらったことあったな。」
優美、頬を赤らめる。
美紀「この子ったら、先生に渡すタッパ。大事そうに冷蔵庫にしまい、何時間かおきに夜中見に来てたんですよ。」
優美「何で知ってるの?お母さん。」
美紀「あれだけ、冷蔵庫が夜中に開けば気づくわよ。かわいいとこあるんだから。」
優美いてもたってもいれない気持ちになった。
優美「もう、お母さんったら知らない。」
一同、大笑い。

美紀の実家(朝)
風見「おい、涼風。先生、明日には帰らないといけないんだ。どこか遊びに行かないか?」
優美「お母さん、誘ったら?私と行くより楽しいよ。」
風見「(睨みながら)涼風。」
優美「うそだよ。マジにならないでよ。」

優美は、東京でしたことない遊びを楽しんだ。
魚採り。
虫捕り。
川泳ぎ。
なんか幼少時代に帰ったように何もかも忘れて楽しんだ。
もう帰りたくない心境だった。

学校(放課後)
風見「よう、高原。」
久美「あっ、先生どうだった?優美からも連絡なかったから心配で。まさか先生の知り合いだったとはね。」
風見「俺も驚いた。」
風見、久美にいきなり土下座。
風見「頼みがある。」

教室(中)
女子生徒A「あー、やっと先生が戻ってきた。先生聞いてよ。ヒゲオヤジってね。」
生徒達が騒ぎ出す。
風見「まあまあ、中村先生も一生懸命やってくれたんだから。」
生徒達、再び騒ぎ出す。

毎年恒例の九月第二日曜日、 町内祭りのポスターが張り出された。
街中も提灯が垂れ下がり、お祭りムードになってきた。

久美「ラッキー、待ってよ。もう。」
公園(中)
ラッキー、風見にワンワン近寄る。
久美「あんた、先生に預かってもらったら。先生のいるとこすぐわかるみたい。本当に疲れる。」
風見「犬にやきもち妬いてどうするんだ?ひょっとして高原も俺の事。」
間髪待たずに一蹴した。
風見、倒れる。
久美「ラッキー、行くよ。バカ。」
風見「何すんだよ。冗談なのに。くそ、退学だ、退学。」
久美の家(夜)
久美「お父さん、祭りの準備、順調?」
父・勝「おお、順調だとも。毎年この日を楽しみにしてんだからよ。」
ビールをたくさん飲んで赤い顔がより赤くなっている。
久美「あのさ、お願いがあるんだけどさ・・・・。」
勝「わかった。父さんに任せとけ。かわいい娘の頼みなら何でも・・・。」
久美、勝に耳打ちした。
勝「何ぃー。そんなことやるのか?それは・・・。」

公園(夕方)
久美「先生。昨日、優美から電話あって明日に帰るって。ちゃんと浴衣買った?」
風見「大丈夫だよ。先生、これでも、学生時代、ブイブイ言わせてたんだから。」
久美「(呆れ顔で)先生、それどうみてもワイだから。本当に英語教師なの?」

健一「なあ、小耳に挟んだんだけど、九日に帰ってくるって本当か?」
久美「小耳じゃないでしょ。盗み聞きしてたくせに。」
健一「知ってたのか?」
久美「当たり前でしょ。そんな五分刈り頭、この辺じゃあんたしかいないわよ。」

風見、同僚の教師達と居酒屋を出て別れる。
橋から街を見渡す。
風見「きれいだな。この街、こんなきれいだったんだ。」
優美の家のほうを見る。
電気がついている。
目を疑った。
他の家より数倍明るく見えた。
風見「帰ってきたんだ。ヤッホー。」
風見、我をわすれたように大きな声で叫んだ。

学校・校門(朝)
優美「おはよう。先生。」
風見「おはよう。」

職員室(外)
風見「ついに引っ越すのか?」
優美「うん。お祖父ちゃん、一人ほっとけないし。先生も実家あるし、いつでも会えるしね。」
女子生徒「優美ー。」
たくさんの女子生徒が駆け寄ってくる。
風見「涼・・・。」
優美「先・・・。」

優美・自宅
ピンポーン
美紀「はい?あっ先生。」
風見「美紀さん、自分あなたに自分の姉、思い浮かべてました。初めは、ただ、姉に似てるからということで気になっていました。でも、気持ちが変化していることに気づきました。一人の女性としてみている自分に気づきました。」
美紀「ごめんなさい。それは、あなたの一時的な思いにちがいないと思います。あなたにならもっとふさわしい女性がいるはずです。このまま付き合っても長くは続かないでしょう。」
風見「そんなことありません。僕は、いつまでも・・・。」
美紀「ごめんなさい。」
美紀は、戸を閉めた。
風見、立ち尽くし泣いている。

アイスクリーム屋(夕方)
久美「あっ、今日、お金五百円しかないや。」
優美「いいよ。私がおごるよ。」
優美、財布を捜している。
優美「財布、忘れた。」
久美「何か一つ買って二人で分けよう。バニラにしようよ。バニラ。」
優美「チョコがいい。」
久美「・・・。」
久美、耳を疑い、優美を見つめる。
優美「どうしたの?久美?」
久美「よし、たまには、優美のいうとおりにしようか。今まで、私に意見聞いてもらってばかりだからね。」
優美「ありがとう。」

公園(中)
二人でアイスクリームをなめている。
草むらで五分刈り頭が動いた。
久美「優美、トイレ行ってくるね。」
優美「うん。」
健一「あっ、優美。」
優美「久しぶり。」
健一「転校しちゃうんだってな。元気でな。だけど、俺、ずっとあきらめないからな。高校出たら戻ってきてくれないか?俺いつまでも待ってるからさ。」
優美「約束できないけど、健一のこと考えてみる。私が、一番素直になれる存在だから。私、夢見つけたの。介護士になるんだ。その勉強するためにこっちの学校に入るかもしれないし。付き合えるかはわからないけど。」
健一「俺、待ってる。」
優美「うん。」
健一の目から涙が落ちる。
優美「健一、似合わないよ。」
健一「うるせー。目にごみが入っただけだ。」
健一、足早に公園を出る。

久美「あれは、優美の本当の気持ちだから。自信もっていいよ。健一。」
健一「ああ。」
健一、自転車で勢いよく坂を下っていく。

スーパー
風見、店内へ入ってきた。
美紀のレジは混んでいる。
他のレジは、比較的すいている。
風見は、美紀の列へ並ぶ。
美紀、レジ打ちの手が止まる。
客「カードでお願いします。すいません。」
美紀「あっ、すいません。」
美紀「ありがとうございました。」
風見「美紀さん、話が・・・。」
美紀「ありがとうございました。」
風見、そそのかされるように出て行く。

鮮魚コーナーの前に拡声器が置いてある。
風見「美紀さん、俺の気持ちずっと変わりません。若いからって気持ち変わりません。俺も立派な大人です。信じてください。一生気持ちはかわりません。あなたがいないと、自分が自分でなくなります。美紀さんのスクランブルエッグ食べたいです。」
店内中に響き渡る。
客達が騒ぎ出す。
美紀、風見のほうへ歩き出す。
美紀「恥ずかしいことしないで。」
風見の頬をたたく。
客達、驚く。
美紀「でも、ありがとう。信じます。」
風見、美紀に口づけをした。
店内から拍手が起こる。
久美「やるもんだね。先生も。」
優美「恥ずかしい。早く帰ろう。」

夏祭り
優美「うわあー。すごい。綿菓子食べたい。チョコバナナもいいな。」
久美「おい、優美、子供じゃないんだから騒ぐな。」
優美「でも、浴衣着ると女の子だね。久美も。」
久美「優美が無理矢理きせたくせに。」
優美「でも似合うよ。」
久美「ありがとう。」
綿菓子、たこ焼き、焼きそば、チョコバナナを食べ歩く優美。
久美「それだけ食べてよく太らないね。」
優美「そういう体質なの。」
金魚すくい、輪投げを楽しんだ。

優美・自宅
ピンポーン
風見、浴衣姿で立っている。
風見「祭り行きませんか?」
美紀「そうですね。着替えてきます。」
美紀、浴衣に着替えた。
風見「きれいだ。」
美紀「そんなにジロジロ見ないでください。恥ずかしいです。」
風見「すいません。行きましょう。」
風見と美紀手をつなぎ歩いていく。
ラッキーがかけてくる。
風見「今日は、留守番。おとなしくもどりなさい。」
ラッキー、寂しそうに戻っていく。
美紀「お祭りなんて何年ぶりかしら?優美が小さいときだから、約十年ぶりかしら。」
風見「僕もそのくらいですね。」
風見、チョコバナナや焼きそばやじゃがバターを買い込んで食べている。
風見「すいません。だらしなくて。」
美紀「いいんですよ。若いころの主人そっくり。あっ、ごめんなさい。」
風見「あっいいですよ。気になさらずに。そのことが僕を気にしてくれた要因でしょうし、今は、感謝してるくらいです。」
風見、食べ物にかじりついている。
美紀「そんなに食べても太らないんですか?」
風見「体質かもしれません。」
あたりは、にぎやかだ。
恋人同士。
友人同士。
家族連れ。
みんなそれぞれ楽しんでいる。

商店街の人A「おう、高原さん、今年は、どんなのみせてくれるのか楽しみだな。」
商店街の人B「毎年、期待を裏切りませんからね。期待してますよ。」
勝「あはは(まいったな)。
祭りは、ピークを迎え、秋の空に一足遅い花火が上がる。
みな足を止めている。

優美「たまやー。」
風見「たまやー。」
四人、顔をあわせる。
美紀「二人とも子供みたい。」
一同、笑う。
パーン・ドーン次々にきれいな花火が上がる。
しばらく花火がやむ。
優美「どうしたんだろ?」
久美「見てくる。」
アナウンス「さー、みなさま、お待たせしました。最後の花火です。今年は、どんなものでしょうか?さ、どうぞ。」
アナウンス「すいません。少々、おまちください。」
客達、笑い出す。
アナウンス「さ、準備できたようです。お願いします。」
パーン
涼風 美紀・風見・優 婚約おめでとう。
みな拍手していた。
美紀驚く。
二人、見つめあいキスをした。
花火が明るく照らしている。
優美「二人の婚約は、うれしい。でも、まだお父さんって呼べないよ。」
風見「亡くなったお父さんは、いつまでも優美のお父さんだよ。わすれなくていいさ。」
そっと、母は、父親からもらったネックレスを優美につけた。
優美の目から涙が落ちた。
優美は、ネックレスを大事そうにほお擦りをした。
父親のぬくもりをかすかに感じた。
鈴虫が、いっせいに鳴き出した。
三人の旅立ちを祝福しているようだった。
心地よく、優美は、聞いている。


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